小原啓渡関連 - メディア情報

2003.10.01

『ヌーボー・シルクの真価』TheCard/2003年10月

サーカスから統合芸術へと昇華した
ヌーボー・シルクの真価
「キダム」は2003年2月7日~12月7日、東京・
名古屋・大阪・福岡の特設テントで上演されます。
Photo:Al Seib Costumes:Dominique Lemieux
©Cirque du Soleil Inc.
一九八〇年代半ばから
めた新しいサーカス(ヌーボー・
シルク) の潮流は、伝統的なサー
カスのテクニックを骨幹にしつつ、
演劇や音楽、美術といった他ジャ
ンルと融合し、多岐にわたる複合
的な進展を見せてきた。世界各国
でオリジナリティーあふれる数多
くのパフォーマンス集団が登場し、
新しいエンターテインメントとし
その位置を獲得している。中で
もカナダを本拠地とするシルク・
ドゥ・ソレイユは、世界最大級、
最高峰のスペクタクル集団である。
九二年の『ファシナシオン』、
九四年の「サルティンバンコ」、
九六年の『アレグリア」に続き、
二〇〇〇年の「サルティンバンコ
2000』 では、日本五都市で総
百二十四万人の観客を動員し、
未曾有の絶賛をあびた。
はるかに見上げる高所で演じら
れる空中パフォーマンスや、十数
人が一糸乱れぬ動きで作り上げる
技のアクロバット等、身体能力
極を表現する卓越したサーカ
ステクニックは、国境・人種を超
えて観客の度胆を抜き、言い知れ
ぬ感動を与える。しかし、シルク・
ドゥ・ソレイユの真骨頂は、それ
にも増してショー全体を貫くアー
ティスティックでコンテンポラリ
な演出にあると言えるだろう。
観る人を日常生活から引き離し、
非日常な異次元へと導いて行く
密な演出は、観客が巨大テントに
入場する時点から始まっている。
マジカルな舞台装置、エキゾティ
ックで前的な音楽や衣装、
的 効果など、作品を構成す
るすべての要素に、洗練されたセ
ンスと創造性が満ちあふれている。
そのシルク・ドゥ・ソレイユが、
他の作品よりもストーリー性を持
たせ、パフォーマンスとの要
素をより深く統合した作品 『キダ
ム」を引っさげて来日する 。
サーカスという分野を超越し 、
従来、相容れないと思われてきた
芸術性とエンターテインメント性
あいい
バランスで融合した統合
芸術の枠は、 今回も観客の知的欲
求を満たしてくれるに違いない。
劇場プロデューサー 小原啓

2003.08.31

『小劇場におけるロングランへ公演への挑戦』セゾン文化財団ニュースレター/2003年8月31日

[article
小劇場におけるロングラン公演への
挑戰
小原啓渡
|アートコンプレックス1928
БЛОГА
1928年に建造された毎日新聞社京都支局が、 「アートコンプレック
ス1928」としてリニューアルオープンしたのが1999年12月。 京都市の
指定歴史建造物となっているビル自体は、 70数年の歴史を重ねてい
ますが、 劇場スペースとしては、 まだ4年足らずの新参です。
活動のコンセプトは、劇場名が示す通り 「コンプレックス」つまり「複
合」 です。 杮落し公演は、 ダンスと演劇・映像等を複合的に取り込ん
だカンパニー 「コンドルズ」。 アート性とエンターテイメント性を兼ね備え
またコンプレックスアートの発露と、劇場として複合的な芸術環境の整備
をどう進めていくかをテーマに活動を続けています。
具体的には、 京都で創作活動をするアーティストのための長期滞在
者向け、 格安宿泊施設 「アーティスト・イン・レジデンス京都」の運営。
ダンス・演劇などの批評を集めたフリーペーパー 「パンプレス」の発行。
FMラジオにおけるステージ情報番組 「ステージ・アバンギャルド」 の制
作。 当劇場以外での公演プロデュースなど、 複合的に相乗効果を生
むであろう可能性を持つ芸術環境の整備と、 新しい観客層を取り込む
ためのアウトリーチに力を注いでいます。
これら一連の活動の中で主軸において取り組んでいるのが、「京都
三条御幸町ブロードウェー化計画」 京都にブロードウェーのような劇場
群をつくろうという夢のような計画です。これは、 当劇場が京都の中心
地にあるという事もありますが、何より世界的な国際観光都市としての
ポテンシャルを持つ「京都」を十二分に生かし、地域に文化的な影響
を与えるだけでなく、大きな経済効果をもたらしていく活動としてアート
コンプレックス1928が取り組んでいる挑戦的なプロジェクトです。
|エンジェルシステム
調べを進めるうちに、日本において「エンジェルシステム」が定着し
ていない理由として、 1. 日本では米国と比べ一般の人達の間で「投
資」 という直接金融の考え方が希薄である事。 2. 舞台を鑑賞するとい
う習慣が日常生活の中に根付いていないこと。 3. 映画ファンド等今ま
でに行われてきた試みのほとんどに、 方法論的な問題があること、など
が浮き上がってきました。 この内、最初にあげた2点に関しては、ある
意味長期的な課題と言えますが、3点目に関しては過去の失敗例を具
体的に検証し、より実現可能な方策を考え直してみることは意義ある
事だと考えました。
過去の事例における失敗要因は、いくつも考えられましたが、 中で
も投資家にとってのリスクが大きいと思える事、 投資対象となる作品に
関する具体的な情報が少ない事、目標の投資額が集まらなければ、
プロジェクト自体が動きださないような収支計画によっている場合が多
い事などが大きな要因に思えました。 とにかく必要な資金を集める事の
みが目的になり、 新しい投資市場でのその成否が、 後続する企画に
対して大きな影響を及ぼすことや、単発イベントではないシステムとして
の持続性などは考えていない場合が多いように思えました。
もちろん、ブロードウェーにおいても、投資家が利益を得る確率は25
%程度と言われ、 投資である限りリスクは発生します。 しかし、あまりに
も失敗例ばかりが続くと投資熱は当然のごとく下がってしまいます。
最初のロングラン公演
| 2002年2月に行った1回目のロングラン、 京都の新鋭劇団 「電視游
科学館」による26公演は、 エンジェルシステム構築における最初の
ステップとなりました。
この公演では資金を集めることはせず、劇場と劇団がリスクを分か
ち合い、自力でどこまで長期公演を打てるのかを試みました。 目標の
資金が集まらずに頓挫した失敗例などから、 まずは外部からの資金調
無しで、 どこまでやれるのかを確かめる意味と、 今回の結果が次回
出資を募る際に具体的な基準となり、 信用を高める情報となるだろうと
いう考えがありました。 前例のないもの、 成功例のないものに対して二
の足を踏む、日本の一般的な社会通念を考えると、いきなり実績も知
名度もない舞台に対する投資を募っても順調にいくとは思えなかったか
らです。
ブロードウェー化計画の第一ステップとして、最初に始めたのが「エ
ンジェルシステム導入」を具体化するための試みでした。 このエンジェ
ルシステムとは、エンジェルあるいはバッカースと言われる投資家達が
舞台制作に投資し、 ヒットして利益が出れば配当が得られるという、 ブ
ロードウェーで用いられている投資形態です。 このシステムの導入を
本気で考えるきっかけとなったのは、 ブロードウェーで今もロングランを
続けている「ブルーマン」 の公演でした。
「ブロードウェーでやってるブルーマンというパフォーマンスがすごい
人気だ」そんな評判を聞いて渡米し、 公演会場を訪ね、 まず驚いたの
が客席数400程度の決して設備的にも十分とは言えない、 その劇場自
体の規模でした。 「こんな小さな劇場でも、コンテンツさえ良ければロン
グランが出来る」 まさに 「目からうろこが落ちる」 という感覚を味わいまし
た。
帰国後、 「エンジェルシステム」について調べ始めると同時に、「な
ぜ、日本でこのシステムが定着していないのか」という検証を始めまし
た。 インターネットを使って情報検索を進めていくという方法を取りまし
たが、これはかなり有効でした。
0viewpoint no.26
劇場と劇団、双方で何度もミーティングを重ね、 どうすれば質を落と
さず、経費を極力節減して長期公演が打てるかを話し合いました。 実
施時期を2月に設定したのも、 貸小屋としての需要がもっとも低い月、
つまり年間で最も売り上げが低い月であるという理由からでした。
徹夜続きの24時間態勢での仕込みに10日間、 公演期間21日、 小
劇場としてはきわめて稀な合計26公演を敢行し、 劇団にとっては過去
最高動員数の2倍以上、 京都では記録的な1650名の集客となり、 本
格的なロングラン公演成立に向けて、 十分な手ごたえを感じることがで
きました。
2度目のロングラン公演
2度目のロングラン公演の試みは、翌年2003年の4月から5月の連
体にかけて、1回目と同じく「電視遊戲科学館」を起用しました。 前回
より2日多い12日間の仕込みと21日間の公演期間、前回と同じく26公
演を行いました。 私が再度、 電視遊戲科学館を選んだ理由は、 作・演
出を含めたスタッフ達の、 より完成度の高い作品を創ろうとするこだわ
2002年2月 科学館
「ノスフェラトゥ」
2003年4月、電視遊戲科学館「牡丹灯
りの強さにありました。 例え、仕込み期間を増やし、資金を注入しても、
作品の完成度が上がらなければ意味がないからです。
1回目からのステップアップとして、 前回の動員数1650名をベイライ
ンに掲げ、「セーフティーネットとしてのメセナ」 という新しい文化サポー
トの形を提案し、 出資を募ることにしました。
一口1万円の出資金は、 前回の動員 (1650名)に達すれば全額返
却するが、 前回の動員に満たない場合は100名単位で10%ずつ、 出
資金の中からメセナして頂くというシステムです。 例えば総動員数が
1000名だった場合、 前回の動貝1650名から650名のマイナスとなり、
出資金の65%を援助していただくことになります。 つまり1万円を出資
された方は3500円しか返却されないことになります。
出資者には、1日につき1枚の招待券と出演者や作・演出家などを
交えた交流パーティーへの招待を特典としましたが、もし昨年の動員
を大きく超えて収益が上がった場合でも配当はありません。 しかし、出
資者の方々は、損得の問題ではなく、個人として文化の担い手となれ
る実感を味わうことに意味を見出しておられる方がほとんどで、実績と
しての前回のデータや今回の基準となる具体的な情報が揃っているこ
とへの信頼感、 出資額をポケットマネーの範囲ともいえる1万円に設定
したことなどがリスク感の軽減につながったためか、出資の相談に皆
さん快く協力して下さいました。
最終的に私募 (公募に対して私的に出資金を集める形式)の限度
数でもある49名から72万円が集まりました。 ほとんどの方は私の個人
的な知り合いでしたが、劇場プロデューサー、 大学教授、 企業の経営
者、医師や神社の宮司など多岐に渡り、公演期間中どうしても都合が
つかなかった数名を除いて、ほぼ全員が公演を見に来て下さいまし
また中には小劇場で演劇を見るのは初めてという方も多かったのです
が、観劇後は皆さん高揚された雰囲気で喜んでおられ、 知り合いの
方々に次々と公演を紹介してくださり、一人で30数名のお仲間を連れ
て来られる方まで現れました。
実際、集まった出資金によって、 チラシの製作や舞台美術、 衣装な
ど、 小屋入り前に必要な制作経費の持ち出しに苦慮することが減り、
よりクオリティーの高い製作物を作る事ができたばかりでなく、多くの
方々に出資頂いたことで、 つまらないものは見せられないという、いい
意味でのプレッシャーが、 全スタッフの創作エネルギーを高めることに
つながったと思います。
結果、最終動員数は1936名、1回目を300名以上上回ることがで
き、出資頂いたお金は全額お返しすることができました。
そしてこの小さな成功は「セーフティーネットとしてのメセナ」というシ
2003年3月、キュキュビ「スーパーメガヒッツ」
ステムが過去に例を見ないものであったことも含めて、少なからず話題
となり、新聞、雑誌、テレビなどの取材が続きました。 それも文化面だ
けでなく社会面、経済面での扱いが多く、 舞台に対する投資というシ
ステムが、コンテンツファイナンスという新しい投資市場において注目を
集めるきっかけとなりました。
3度目のロングラン公演
現在、インターネットの爆発的な普及とネットを用いた証券取引の登
場によって、 株売買の手間が簡素化され、 個人投資家の存在がク
ローズアップされてきています。こうした社会的な潮流にも影響を受け
る形で、 2003年10月に行ないます3度目のロングラン公演は、証券会
社と連携し、 エンジェルシステムを導入する事に決定致しました。
作品の証券化は、映画ファンドなどの形で以前から試みがつづけら
れてきましたが、利益を上げて配当に及んだ成功例は非常に少なく、
舞台公演に至っては試みられた前例さえほとんどありません。 しかし、
2002年12月に東京で行われた中国雑技団公演 「ゴールデン・ライオ
「ン」において公募された2億円分の証券が2週間で完売した事実をみ
でも、こうしたコンテンツに対する投資に興味を持つ方がけっして少な
くないということが分かります。 「ゴールデン・ライオン」に関しては、結
局投資額の半分程度しか返却されず、投資対象としては失敗例とな
りましたが、 舞台公演に投資をするという法的なスキームが証券会社
を介して確立し、実施されたという意味で価値ある試みであったと思い
ます。
実際、3度目となる次回の映像&パフォーマンス集団「キュピキュビ」
によるロングラン21公演は、このスキームを用いて実施します。 アート
コンプレックス1928が特別目的会社 (SPC) を立ち上げ、 投資家との間
に匿名組合契約を結ぶという形です。
今回は目標額を200万円に設定し、 1日2万円、 インターネットを用い
て公募します。 既に100万単位での投資希望もありますが、あえて小
口投資にこだわりたいと、 最高5口までと致しました。 あくまで現段階で
は、 投機的な意味合いよりもリスクの少ない形で、 より多くの方々がサ
ポーター的な気持ちで舞台制作に参加していただければと願っていま
す。 投資を機会に、これまで演劇やミュージカルなどに無縁だった
方々が少しでも多く舞台芸術に関心を持たれ、 実際に足を運んでくだ
されば、新しい観客層の開拓につながります。 これは、社会に対する
アウトリーチの一形態としても、大きな可能性を含んでいると思います。
viewpoint: no.26-0
効率のみを優先した近代資本主義と物質文明は、地球を破滅的な
状況に導いてきました。 そんな中、 物質の豊かさより、心の豊かさを求
める価値観が急激な広がりを見せています。 人々は、自然や民族な
どあらゆる関係性における調和の精神と、心の豊かさの大切さに気づ
き始めています。
どんな価値観を持った人も、感動に涙を流す瞬間はみな同じです。
同じ至福の瞬間を味わう事ができます。 感動は心の豊かさに通じる扉
です。そして劇場は、 より多くの創り手や観客が、 何度も何度も感動と
いう心の扉を開けて、 本当の豊かさの中へ入って行ける機会を創り、
提供し続ける場所でなくてはなりません。
いつか京都にブロードウェーのような劇場群が出現し、感動的な舞
台がロングランで公演を続けている。 昼は寺社仏閣など伝統文化に親
しみ、夜は現代的な舞台芸術を楽しむ、そんな心豊かな生活を求める
人々が日本各地から、世界中から集まってくる。 そんな未来のすばら
しい京都の姿を夢に描きながら、 意欲あるスタッフと、 文化芸術の重要
性を理解してくださる方々の協力を糧に、地道に、誠実に活動を続け
てゆきたいと思います。
小原啓(こはら・けいと)
アートコンプレックス1928プロデューサー。 兵庫県
出身 同志社大学法学部政治学科中退。 1983年
より照明技術者として舞台に関わる。 91年、 舞台
制作会社リッジクリエイティブ株式会社設立。 92
年から98年まで、 日仏共同プロジェクト [MATOMA」
テクニカルディレクター。99年、アートコンプレックス
1928 を立ち上げ、 プロデューサーに就任。 長期滞
在アーティストのための宿泊施設 アーティスト・イ
ン・レジデンス京都の運営をはじめ、フリーペーパー
「パンプレス」の発行等、 芸術環境の整備に関わる
活動を続けている。 また、ヌーボーシルク (新しい
サーカス)のプレゼンテーションに力を注いでおり、
2003年10月にはフランスから 「アポストロフィ」を招
し、 神戸と京都での公演をプロデュースする。 同
10月から、映像×パフォーマンス集団「キュピキュ
ビ」によるロングラン公演を、12月には「コンドルズ」
5度目の京都公演を主催する。
BEST on dem SEPTE

2003.08.25

『小劇団支援の活路となるか』週刊京都経済/2003年8月25日

News & Analisys 小劇団支援の活路となるか コンプレックスアートグループ 「Kyupi Kyupi(キュピ キュピ)」の公演活動にファンドが創設された。 同グル ープは、映像や歌、 パフォーミングアートを組み合わせ 国内外で高い評価を得ている。 しかし、 小グループゆえ に長期の公演活動を実施するには資金的な余裕を作り出 しにくいのも事実。 数多くある小劇団のスタッフでまと もに“食え”ている人はほとんどいないとも言われる。 今回の文化・芸術活動に対するキャピタル投資が活路と なるのか。可能性と課題を探った。 (1面に関連記事) 過剰な“投機”にしない運営が課題 「小劇場で行う小劇団公演のよさは なんといってもその臨場感」。 アート コンプレックス1928の小原啓渡プロ デューサーはこう話す。 1928 は、 京都を代表する小劇場。 多 くの若手演劇家やアーティストがその 活動の舞台に選ぶ。 客席数は、 椅子を 並べて最大250席。立ち見を含めて 300人も入れば、たちまち押し合い へし合いの状態になる。 それだけに、 演者の息づかいまで手にとるように分 かるというわけだ。 関西にはこうした小劇場が少なくな い。 しかし、 若手アーティストや新興 劇団には、 資金的余裕が乏しい。 チケ ットの販売収入で経費をまかなうこと から、事前に舞台芸術などへ十分な “投資” ができないこともある。 キャピタル投資を行うメリットは、 この点にある。 劇団側には “初期投資” を得る点が、 劇場側には会場の利用収 人を拡大するチャンスになる点がそれ ぞれにある。 一方、投資家の側から見てみると、 キャピタルゲインをどう得るかという 命題になる。 より集客力のあるコンテ ンツに投資しようとする力学が働く。 劇団や劇場にとってはより魅力的なコ コンテンツ作りに向かう競争原理を生み 出すことになるわけだ。 しかし、このキャピタルゲインへの 関心が行き過ぎると、 投機バブルを招 くことになる。今回の取り組みでも、 「一番気をつけたのは、一過性の投機 につながらないようにすること」 (小 原プロデューサー) という。 投資額を 一口あたり2万円に抑えたのはこの ためだ。「必要以上の資金は集めない」 (同)ことも徹底した。 投資と投機の境目は、常に揺らぐ。 こうしたリスクを管理するには、 文化 ・芸術活動そのものの意味を見据えた マネジメントが必要だ。 アートコンプレックス 1928 プロ デューサーの小原啓渡氏に、 キュピ キュピファンド創設の経緯と狙いを 聞いた。 (聞き手は井上朋一) ■どういう経緯でファンド 創設に? 「米ニューヨークで『ブルー マン』 というパフォーマンス のステージを見に行った。 エ ンジェルやバッカースと呼ば れる投資家が舞台制作に投資 してロングランを続けている」。 「これを見たときにいいコ ンテンツがあれば、 自分でお 金を用意しなくても長期公 演ができることが分かった。 すぐにファンドを作るわけ には行かなかったので、 メセ ■なぜ直接金融の手法を? 「そもそも間接金融には無理があ る。 信用力も何もない小劇団が融 資を受けることは考えられ ない。一方、直接金融で資金 調達するといっても、 日本の 場合、 そもそも投資の考え方 が希薄。 舞台鑑賞の文化も層 が薄い。 段階的にステップア ップすることで、 逆に舞台鑑 賞や投資を日常に根付かせ ることができると考えた」。 条御幸町に ブロードウェーを作る」 ナ的な要素を取り入れたりる して試行してきた」。 「そんな中、 エンゼル証券 の人と知り合い、協力していただけ ることになったので、ファンドを作 ることにした」。 ■今後はどうする? 「三条御幸町にブロード ウェーを作りたい。つまり、 持続性のある劇場文化の街 を作りたいということだ。 産 業的にも意味のある取り組 「みに成ると思う」。 このプッア |小ロク | 原デスト 啓ュコ 渡19ン 氏サ2プ 18レ

2003.07.24

『サポーター感覚で投資』日経新聞/2003年7月24日

日本經濟新聞
2003年(平成15年) 7月20日 (日曜日)
劇場公演、ワイン、音楽
CDなど様々なイベントや
商品に投資する個人向け商
品が相次いでいる。出資者
として事業を応援できるう
え、うまくいけば大きな利
益を得られるのが魅力だ。
・半面、投資家保護の仕組み
が未整備で元本割れリスク
もある。ファン気分で楽し
個性派ファンドの現状を
探った。
現在募集中の主なファンド
取扱您口
損益分岐点
「京都にブロードウェー
のような劇場街を根付かせ
たい」。着物の元を営む
岡本就介さん(38)は八月
五日から募集が始まる地元
劇場公演への投資ファンド
に出する。
投資額は一口二万円。演
劇グループ「キュピキュピ」
が十月下旬から一カ月弱、
市内の小劇場で公演する前
衛的ミュージカルが投資対
象だ。 期間中の来場者が
二千五百人を超えれば、投
保全管理する。
資家は利益を得られる。
この商品(総額二百万円 「不景気を吹き飛ばすほ
以上)は小劇場の運営会社 ど楽しいCDに仕上げまし
「一九二八」(京都市)がつ
大手
た。応援よろしく」。
くったもので、チケット販 制作会社に属さないインデ
売枚数が多いほど配当が増 ィーズ系五人組バンド「バ
える。七月末に特別目的会 ジル」はまだ見ぬ出資者へ
社(SPC)を設け、資金をこう呼び掛ける。
を刻むのも魅力と語る。
%の値上がり益が目標で、
来春は五億十億円まで募
集を増やしたい」とファン
ド取扱会社の北田朝雪代表
は意欲をみせる。
で同様の動きが広がってい クホク顔。 「一昨年、百万
自然エネルギー市民 円投資して、まず五万円の
広がる設定
ファンドの鈴木亨代表)。 配当を受けた。市中銀行の
自然エネルギー市民ファ 今春、恐竜展イベントフ 預金より、はるかに高利回
ンド(東京・新宿)は九月 アンドを募ったイー・トレ
この商品はた
」と話す。
十六日まで鰺ヶ沢町と秋田 ード証券には現在「複数のる詰め、瓶詰めのフランス
県天王町の風車への出資をファンド提案が舞い込んでワインを買い付け、一定期
募っている。 出資金を風車いる」。映画や書籍で出資 間後に売却する。 「年一〇
を運営する地を募ろうとの動きもある。
元非営利組織 手軽に幅広く募集できる
(NPO) 「グ めインターネット証券が売
リーンエネルり出すケースが増え、 これ
ギー青森」が設定を後押ししている。
ケ沢町)など
■元本割れも
バジル初のミニアルバムに貸し付け、NPOは電力
「ワレワレ」へ投資するの会社に売電して利益を稼 ただ過去の実績をみる
ぐ。十年かけて元本と利 と、投資家の表情は悲喜
一・五%分が戻る仕組みで もごもだ。
原則途中解約できない。
出資者の多くは環境問題
に敏感な二、三十歳代で、
「静岡、北海道、宮城など
サポーター感覚で投賛
運用の結果
まだ出ず。損益分岐
投資対象
仕組み・計画
購入単位 (募集総額)
劇場公演
音楽CD
チケットの売り上げに応じ
CDの販売枚数に応じて
2
入場者が少ないことに
主なリスク
よる元本割れ
二八(京都市)
1万円単位 (63万円)
元本割れ、信用
風車の建設
風車運営主体に融資し金利
と元本部分を4年後、10年後
10万円単位(各1億円)や議などの自然 自然エネルギー市民
投资对象
仕組み
購入单位(募集総額
過去の主なファンドと戦績
恐竜イベント チケットなどの売り上げに
50万円単位(15億円)
イー・トレード証券(東は入場者約85万-90
仏ワイン
現地業者経由でたる詰め、
詰めのワインを
2001年は100万円単位
(8000万円)、2002年以
位 (2001年は8000万円
2003年36200万円
2001年に募集分
東京
は今年5月に5%
ゲームソフト ズ2本の出荷本数に応じた収 10万円以上1万円単位
「ときめきメモリアル」シリー
マネックス
1.05%
中国雑技団のチケット販売などの公演収入 10万円単位(2億円)
アイレクト SFG
47.1%の損失
劇場公演、ワイン、CDファンド・・・
高利回り期待は禁物
がアーティスト育成ファン
ド。いくつかのバンド育成
ファンドを手掛けてきたミ
ュージックセキュリティー
(東京・港)がつくり、
二十二日まで一口一万円単
位で資金を募る。 来年一月
末までのアルバム売り上げ
千百二十一枚が損益分岐点
だ。一万円投資した場合、
売り上げが五百枚だと四千
五百円程度しか戻らない
が、一万枚売れれば約二万
七千円が手元に返る。
東京都三鷹市の望月隆良
さん(72)は今春、「孫世
代に、化石燃料を使わない、
きれいな空気を残したい」
青森県鰺ヶ沢町の風車に
二十万円投資した。 「リス
クは承知の上。 半分は献金
の気持ち」という望月さん
は風車の支柱に孫二人の名
ファンドの仕組み (中国雑技団公演の場合)
名組合契約
雑技団公演
チケット収入
設立、出資
事業主体
東京ファイナン
DLJディレクトSFG証券
出資金・利益配分
個人投資家(出資者)
最も成功したと評される
のはマネックス証券とコナ
ミが開発したゲームファン
ド「ときめきメモリアル」。
ゲーム出荷本数に応じて償
還額が決まるが、利回りは
一〇五%と必ずしも高く
「ご迷惑をかける事態と
なったことを深くおわび申
し上げます」。今年三月、
ただ投資額十万円以
ない。
DLJディレクトSFG証上でゲーム画面の最後に投
が募集した 資家の名前が載り、二十万
中国雑技団公円以上で限定版ゲームがも
演出資者らえる特典がマニアらの人
にこんな知気を集めた。
らせが届い応援ファンドには事業失
た。期待ほど敗、資金募集の未達成のほ
の来場者がなか「イベント中の食中毒事
く、十万円投故」など様々なリスクがつ
資しても五万きまとう。 恐竜展ファンド
三千円程度 の説明書には二十のリスク
か戻らなかっ
ファンド
が並んだほどだ。
た。
に詳しい藤沢久美ソフィア
逆にワイン バンクディレクターは「リ
ファンドに投 スクが多く株式ほどの利回
資した川崎市は期待薄。 応援したい商
番場保一さ品やイベントへの投資を楽
ん (6) はホしむ余裕が必要」と話す。
埋めに使う恐れもある。公れば事業者が倒産しても出
認会計士の伊藤雅之氏は 資金は原則SPCに分別
「投資を決める前に事業者 保全されるからだ。
第二に注意したいのが情
信頼できるか、過去に成
(ディスクロージャ
ない」(ジャパン・デジタル・功実績があるかなどを見極報開示
算報告内容などもできるだ
け確かめよう。
経済産業省は「現在の
名組合による投資商品につ
いては、投資家を保護する
のみを引き受ける。
|中公
一口に応援ファンドとい
っても玉石混交なので、投
資に際して最低限の知識
押さえておきたい。 ほとん
どのファンドが低コストで
設定できる匿名組合をつく
出資者を募る方式を採っ
ている。 そもそも匿名組合
出資者になるとはどうい
うことか。出資者は事業者
と一対一の契約を結ぶ。出
資者には利益分配請求権
けがあり一定の利益や損失
匿名組合に出資する最大
の問題は「倒産した場合、
出資者へお金が戻る保証が
法制度が事実上整っていな
ファンド 実績
実績、情報公開カギ
いのが実態」と指摘。「今
後、採算の見通しが甘く、
長)点だ。出資金は事業者
の持ち分になるため、事業
者が別の事業で失敗し、フ
見分け方
コンテンツの土井宏文社 めることが大切」と話す。 1) 姿勢。 投資信託の目論金集めだけを目的とした団
第一のポイントはSPC 見書に似た説明書を投資家 体が出てくる恐れもある」
SPC設に配り、 収益をシミュレーと業界に自主ルールの策定
があるかどうか。
置には通常、数百万円の負ションしているかどうかをを促している。
アンド資金をその損失の穴 担がかかるが、SPCが確認したい。事業主体の決 (マネー&ライフ取材班)
メールはmoneylife
okyo.nikkei.co.jp

2003.07.24

『求むエンゼル 公演を証券化』中日新聞/2003年7月24日

2003年(平成15年) 7月24日 (木曜日)
中日新聞東海本社2003
(日刊)
CULTURE
個人投资家。
氷むエンゼル
劇
京都の公演を証券化
「エンゼル」 という言葉をご存じですか。 普通なら
「天使」 だが、ベンチャー企業などに資金を提供する
「個人投資家」の意味も持つ。米国では、ハリウッド
映画やブロードウェーの舞台など娯楽・芸術の分野で
もエンゼルの存在は大きい。 日本でもエンゼルを増や
そうと、 京都市の小劇場が証券会社と組み、 1口2万
円と小口化して出資者を募る取り組みを始めた。
「振興の切り札」 として、 全国の劇場関係者から熱い
視線を浴びている。
(花井 勝規)
出資を呼び掛けているのは、京
都市中京区三条通御幸町の小劇場
「アートコンプレックス192
8」。同劇場の小原プロデュ
ーサーは「共同馬主制をヒント
に出資金を小口化してエンゼル
リスクを軽くしようと考え
た。一口二万円ならばポケットマ
感覚で投資できる。 出会が参
加意識を高め、演劇ファンのすそ
野を広げる効果も期待できる」と
話す。
出資金を小口に
下旬から二十日間行われるパフォ
ーマンス集団 Kyupl Ky
対象となるのは、同劇場で十月
ファン層拡大も狙い
「アートコンプレックス1928」 の前で創
場版の投資について語る同劇場のプロデ
ューサー小原啓
さん=京都市中京区で
劇場版投資対象「Kyupi
Kyupi」の舞台ーアート
コンプレックス1928で
uDI (キュピキュピ)の公演
約一千万円の制作運営費のうち、
二百万円程度を資金の受け皿会社
に集め、広告宣伝費などに充て
る。 公演終了後に、興行収入か
経費を差し引いた利益を出資
に応じて投資家に分配、 配当は
チケットの売れ行きで変わる。
公演が低調なら元本割れの可能
性もあるが「採算ラインは著しく
低く設定した」 (小原氏)とい
い、順調に観客が入れば100%
以上の配当になる可能性もある、
と強気だ。同劇場にノウハウを提
供しているエンゼル証券 (大阪
市)も「不動産などの投資ファン
ドに比べ、高いリターンが期待で
きる魅力的な案件」(同社資本
成事業部)と期待する。
中日新聞
資金難にあえぐ小劇場では、公
赤字の場合 劇団員の
ち出しでしのぐケースが多い。
出資金は赤字 になり、
場経営の安定化につながるメリッ
トもある。「出資する以上、公演
よい意
に対する目は厳しくなる。
味で劇場との間に緊張感が生まれ
るのでは」と作品の質の向上に期
する出資者もいる。
関西経済連合会の劇場文化研究
会のチームリーダーを務める佐藤
友美子サントリー不易流行研究所
長は「企業メセナの時代が終わ
りかけているなか、エンゼル投資
は文化振興に市民を参加させる有
効な仕組みの一つになり得る」と
来年から同劇場も含めた関
注目。
西地区の劇場を対象に「劇場エン
ゼルシステム」の試行を検討して
おり、有力作品数本を選んで投資
家の前で投資を募るオーディショ
も計画している。
作所 中日新聞東海本社
45
TA250350 U 063-821) 771

2003.07.01

『新しいサーカス ヌーボーシルク』関経連経済資料/2003年

20061224-kankeiren200307_1.jpg

2003.07.01

『劇場のビジネスモデル』関経連経済資料/2003年

劇場のビジネスモデル
- 「複合というコンセプト」
アートコンプレックス1928
プロデューサー 小原啓
アートコンプレックス1928は 、
1999年の開業以来3度の決算を終え
たが、 今のところ微少ながらも黒字
経営が続いている。 実際のところは
「トントン」 と言った方が正しいだ
ろうが...。
近年、大阪を中心に劇場閉鎖の報
が相次ぎ、 公共文化施設の維持費の
膨らみ等も問題視される中、開業後
約3年間が初期投資や認知度の低さ
などの理由で最も経営的にきつい と
言われるこの時期を、 当ホールがな
ぜ 「トントン」で乗り切れたのか、
自分なりにその要員をチェックして
みる事で他の劇場経営者の何らかの
参考になればと思う。
まず、劇場を立ち上げる際に私が
コンセプトとしたのが、劇場名が示
す通り 「コンプレックス」 (複合)
という事だった。 これは催し物の内
のみならず、経営形態にも及ぶ。
一時期 「多目的ホール」 がもては
やされたが、すぐに 「多目的ホール
中途半端」 という悪評が定着した。
これは、舞台、照明、音響などの設
備的ハード面、制作、技術スタッフ
等のソフト面、 両面において演劇.
コンサート、ダンスなど微妙に異な
専門的なニーズに的確に応える
事ができなかったからに他ならない。
しかし、各分野の専門的ニーズに専
門的に対応でき、 各分野の方々に満
足を与える事ができれば 「中途半
と言われる事は無く、劇場とし
ての需要は市場規模、認知度の面か
らもかなり拡大する事になる。
幸い私は20年に及ぶプロの舞台技
術者としての現場経験から、 多目的
ホールの欠点を使用者の立場からも
熟知しており、この問題を解決する
具体的な手段を知っていた。 これに
よって、演劇からコンサート 展示
に到る迄、 専門的なニーズに応えつ
つ、幅広い需要を受け入れる事がで
きたことは稼働率を高める大きな要
因となった。 また、 私が別会社とし
て経営している舞台、照明、 音会
社の技術員を中心に劇場スタッフを
構成することで、外部業者に発注す
ある場合に比べ、人件費を大幅に減
する事ができ、劇場が入っているビ
ルのオーナーとの共同出資で劇場
営会社を設立した事も、大きく家賃
の削減に繋がった。
また、「バンプレス」という舞台
芸術に関する情報を扱ったフリー
ペーパーの発行、 FMラジオにおけ
る「ステージ・アバンギャルド」 と
いう1時間番組の制作などを通じて
独自の広報 告知をしている事も
合的な経営形態の一面であると考え
ている。
その他にも 「アーティスト・イン・
レジデンス」 というアーティスト専
用の格安宿泊施設 (1泊1500円)を
運営する事で、 京都で公演を考えて
いるカンパニーの宿泊に関連する
費削減に協力し、劇場使用の需要を
掘り起こすといった活動も続けてい
る。
以上のように、舞台に関わる様々
な仕事を複合的に組み合わせ、 独自
に運営していく事で、経費の節減と
相乗効果を誘発する事ができ、これ
が何とか赤字を出さずに運営を続け
てこれた理由かと思われる。
ここで少し意味合いは異なるが、
意欲的なスタッフの存在に関しても
触れておきたい。 当ホールの技術。
制作スタッフの90%以上がボランテ
ィアスタッフからアルバイト、 契約
社員、正社員となっていった人達で、
劇場運営の経営的厳しさを十分理解
してくれた上で、低い報酬に不平ひ
とつ言わずに働いてくれている。 何
よりも 「事業は人」 である。 使命感
と意欲を持ったスタッフを発掘し、
育てていく事こそが、 実のところは
最も大切な事なのかも知れない。

2003.07.01

『新しい出資システム』関経連経済資料/2003年

新しい出資システム
「本格的エンジェルシステムの確立を目指して
アートコンプレックス 1928
プロデューサー 小原啓
アートコンプレックス1928では、
昨年2月に続き、今年4~5月にか
けて劇場主催のロングラン公演を行
った。ロングランといっても実際は
3週間 (26公演) 公演日数が事前に
定められた長めの公演という事であ
って、ブロードウェイ等で成立して
いる本格的なシステムにはほど遠い。
昨年は劇団との協力体勢で試み、
1650名の動員を得て、なんとか持ち
出しをしないという意味でのペイラ
インを達成できた。 2度目の今回は
昨年と同じ公演数に設定し、昨年の
動員に達することができれば、出資
していただいたお金は全額返却する
という「セーフティーネットとして
のメセナ」 というシステムを打ち出
し、出資を呼び掛けた。 あくまで自
力でやる事を基本に、赤字になった
場合にのみメセナをお願いするとい
う形だが、最終的には約50名の方々
から出資金が集まった。
出資していただいたお金は、小屋
入り前の大道具、小道具、衣装やチ
ラシ等、通常なら事前の持ち出しに
よってしか賄えない経費に当てさせ
て頂いたが、実際これは予想以上の
効果を挙げた。 製作物のクオリテ
イーが上がった事はもちろんだが、
たくさんの方々に出資をして頂いた
事が、 作者をはじめ役者やスタッフ
にいい意味でのプレッシャーを与え、
昨年以上の意気込みがみなぎってい
「たように思う。
今年の最終動員数は1938名、 昨年
の動員を300名近く上回り、 出資金
は全額お返しできる結果となった。
出資頂いた方々のほぼ全員が実際に
観に来られ、 終演後は一様に興奮さ
れた面持ちだった。 単なる観客とし
てではなく、自分自身がこの公演に
参加した感覚を持たれたが故ではな
いかと想像する。
ロングラン公演には、 現在の舞台
制作環境が抱える問題を打開する多
くの可能性が含まれている。 例えば、
通常2、3日の公演ではその評判が
伝わる頃には既に公演が終了してお
り、新しい観客の獲得に繋がりにく
いという現状を改善する効果、役者、
スタッフのスキル向上を促進させる
ばかりでなく、作品自体を成熟させ
る効果などが挙げられる。 「通常の
短期公演の時は初日が開いた時点で、
なんだかもう終わったような気分に
なるんですが、 今回は初日が開いて
から役者として、本当の試行錯誤が
始まりました」 打ち上げの席で、あ
る役者がこう話してくれた。実際今
回の公演では、初日から26ステージ
を経た楽日の舞台は見違える程の成
熟を見せていた。
また、ロングラン公演というと、
公演期間の長さだけが取りざたされ
る場合が多いが、 見落としてはなら
ないのが仕込み、舞台稽古などに必
要な準備期間の問題である。 昨年は
この仕込みに10日を使い、 今年は12
日間、24時間体制で臨んだ。作品の
傾向 脚本の質などは別にしても、
作品の完成度という意味でこの仕込
み期間は非常に重要である。 初日ま
でに舞台の立て込みや技術サイドも
含めた通し稽古に、 どれだけ時間が
取れるかが作品の完成度に大きな影
響を及ぼすからだ。お金を取る限り、
突貫工事的な完成度の低い作品は観
客に対して失礼である、というのが
私の基本的な考えである。 そういっ
た意味からも、十分な仕込み期間と
公演日数、経済的な採算制、 舞台関
係者が自立した生活を送ることを可
能にするロングラン公演、そしてそ
れを支える 「エンジェルシステム」
が今、必要なのだと確信している。
アートコンプレックス1928は、 大
劇場ではリスクが大きくて踏み切れ
ない実験的な試みを続けていく事こ
そが小劇場の存在価値であると認識
し、将来的にはインターネット証券
を介した、リスクの少ない個人投資
(エンジェルシステム)による舞台
公演が、この日本でも定着していく
ことを目指して、活動を続けている。
いつか日本のどこかでブロードウェ
イのような劇場群を創りたい。 これ
が私の夢である。

2003.07.01

『京都の面的集積』関経連経済資料/2003年

京都の面的集積
―「文化施設が経済効果を生む」一
アートコンプレックス 1928
プロデューサー 小原啓渡
京都は古くから世界的な文化観光
都市としてその名を馳せてきた。 東
京や大阪と異なり、面積的にも小都
市というにふさわしく、 市内観光に
いたっては自転車での移動さえ可能
である。 そういった意味でも京都を
地域的に分割して論じる必要はない
だろう。むしろ統括的に捉えること
で、 京都が持つポテンシャルとその
中での文化状況をより顕在化できる
と思う。
数年前、 「修学旅行生が最も多く
訪れる観光地の1位が、 清水寺から
ディズニーランドへ移行」 との報道
が流れた。 これは歴史的遺産のみで
は、もはや観光地としては不十分で
あることを示す、 一つの象徴的な出
来事に思えた。 もちろん、 現在でも
依然として京都ブランドは存在する。
「行ってみたい街」の人気投票では
いつも最上位にランキングされ続け
ていることも事実だ。 しかし、 観光
客の数は年々減少傾向にあり、 特に
その徴候は若い世代に顕著である。
都市の魅力はその文化度によると
ころが大きい。 自らの居住域にない
環境的、文化的異差を求めて人は旅
に出る。 仕事か用事でもない限り何
の異差もない土地に旅費を払って出
かける人はいないはずだ。 人々は旅
行という非日常の愉しみに至るきっ
かけを常に待っているように思える。
社寺の特別公開や桜の見頃、 紅葉も
そのきっかけとなるが、若い世代に
とっては十分とは言えない。そこで、
彼等の興味を刺激する新しい観光資
源の創設が必要になってくる。 ただ、
何も無い山奥へ人を呼び寄せるわけ
では無いのだ。 評判になっているミ
ュージカルを観るために多くの人が
ニューヨークへ行くように、イベン
ト性とエンターテイメント性を持っ
たきっかけさえ提示できれば、既に
潜在的な魅力を備えた都市に人を呼
び込む事は、比較的容易なはずであ
る。 実際、 そのミュージカルはニ
ューヨークへ行くためのきっかけ、
あるいは口実であったりする場合も
多いからだ。
公私に関わらず、文化施設には地
域における文化振興の役割があり、
その点が重要視されるのは当然であ
る。しかし、地域に対して少なから
経済効果を誘発するという大きな
可能性があることも忘れてはならな
い。 とかく文化芸術は経済と相反す
るかのごとくに語られる傾向がある
が、寺を中心に門前町が発達したよ
うにブロードウェイがニューヨー
クに多大な経済効果をもたらしてい
るように、 人が集まる場所から経済
も文化も発展していくのである。
アートコンプレックス1928では、
全国から観客を呼び込む可能性を持
つ 「ロングラン公演」 の確立にチャ
レンジし続けると共に、 全国、 諸外
国の芸術家が、 京都でより活動し易
くなるための方策として、格安で長
期滞在できる宿泊所 「アーティス
ト・イン・レジデンス」 の運営を始
めている。 以前、ある会社の社員寮
として使用されていたビルを再利用
したものだが、 自炊や洗濯もでき、
他国のアーティストとのコミュニ
ケーションが親密にはかれるという
理由などから使用者には至極評判が
いい。 現在もフランス、アメリカ、
ドイツ、タイ、東京などから10名以
上のアーティスト達が滞在し、 京都
での創作を続けている。この「アー
ティスト・イン・レジデンス」も、
芸術家の多くが日本で、 京都で創作
活動をしたいという潜在的欲求があ
るという事を前提に、 「宿泊費が安
く済むから・・・」という小さなきっか
けを提示したに過ぎない。
他国、 他地域から多くのアーティ
ストが集まって作品を創り、その作
品がより多くの人々を集める。 人の
集まるところに文化が育ち、経済活
動が起こる。 こういった意味からも、
文化をベースにした地域振興こそが、
経済効果と、心の豊かさに価値を置
く新たな文化社会を生み出す大きな
力となると信じている。
文化財指定の建築物を活かし若者に人気の
劇場 (FMラジオ局、カフェ、 ギャラリー
も入居) (京都市中京区の劇場にて)

2003.06.05

『小劇団の経営自立支援』日経新聞/2003年6月5日

芸術に酔う
京都にある私設劇場「アートコンプレックス1928」
が、小劇場系劇団の経営の自立を促す仕組み作りに動き
出した。劇場の自主制作として、ロングラン公演、劇団
の赤字補てんするセーフティーネットを実験的に導
入。今後、劇団を投資対象とする小劇場公演のビジネス
モデルを提案する。
「小劇場文化として根
付かせるには、米プロード
ウエーのようにヒット作を
長期公演できるロングラン
システムと、文化活動を後
する出資者の存在が必
櫻」。アートコンプレック
スの小原プロデューサ
は、小劇場系劇団の公演
採算取れるような上演
システムを打ち出した。
ロングラン公演の第一弾
は、昨年二月七日から三週
間。京都の劇団「電視游戯
科学館] が、がまん延
する大正時代を舞台にした
「ノスフェラトゥ」を、二
十六回上演し、千六百五十
人の観客を集めた。
小劇場系劇団では、一作
の公演でも週末ニー三日ど
まりがほとんどで、百人
劇場では観客動員数も
合計五、六百人程度に限ら
れる。観客が少ないときは、
入場収入で経費を賄いきれす。
ず、舞台装置や広告など
資金で赤字を補てんする仕
ロングラン公演の第二弾 組みだ。実際には四十九人
小劇団の経営自立支援
アートコンプレックス1928
劇団員
する場合も
多い。電視游
科学舘
する国本浩
康は「小劇場
劇団はロコ
ミ宣伝効果が
大きく、新し
いお客さんが
来てくれるま
で一二週間
かかるので長
期公演はあり
がたい」と話
として、同劇団が山奥の
館で起こる怪奇事件を描い
た「牡丹灯籠」を、今年四
月十八日から五月六日まで
上演した。 主催したアート
コンプレックスは、公演
用の赤字を補てんするセ
ーフティーネットシステ
公演に先立ち、
ムを導入。
一ロ一万円で、招待券を付
けて出資者を募集した。
採算ラインとする昨年の
観客動員数、千六百五十人
を達成した場合、出資金を
返却し、採算割れしたら出
京都市中京区
京都の私設劇場
千九百三十
が出資したが、
八人の観客が訪れ、出資金
は返却できた。
電視遊戲科学館の国本は
「任意団体で融資を得にく
劇団に出資までして期待
してくれる人とつながりが
できて何よりうれしい」と
語る。 サントリー不易流行
研究所部長で、出資に参加
佐藤友美子さんは「企
葉のメセナ活動が後退する
なかで、個人として文化の
担い手になれる楽しさが実
感できる」 と、その効用を
公演長期に
赤
字補てん
出資者募る
アートコンプレックスのセーフティーネ
「
演
最初のロングラ
指摘する。
ン公演から小劇場演劇
見始めた会社員の岡本就介
さんも「参加が強くな
り、より深く鑑賞できる。
次回もぜひ出したい」と
好評だ。
科学館」の公
ット、 を使った
て、小劇場劇団やパフォ
ーマンス集団の公演を投資
の対象に、小口の出資者を
募集めた出資金に応じ
入場料収入から 舞台
装置や出演料などの必要
経費を差し引いた剰余金分
を上乗せして、出資者に再
配分する。 現在、集客力の
ある人気パフォーマンス集
団や、コンテンツ・ファイ
ナンスに関心を示す証券会
社と交渉を進めている。
このほか、高額な宿泊費
公演の障害になっていた
海外劇団や遠隔地の国内劇
団のために、宿泊施設「7
ーティスト・イン・レジデ
ンス」 (AIR)を六月か
本格オープンした。 元民
間企業の社員寮だった三階
建てビルを借り上げ、 十一
部屋で十四十五人を受け
入れ、宿泊費も一泊千五百
円程度に抑えた。三月から
試験的に利用を開始してお
り、フランス、韓国、タイ
などの俳優や音楽家らが
在した。
財源不足が常化してい
る小劇団に、新たな資金
が加わることで、舞台づく
一方、出資
りは安定する。
期待に応えるよう、 公
アートコンプレックスは の質と集客力を一段と高
投資家が配当を得られるピ めていく努力も問われそう
ジネスモデルも模索してい だ。
林隆之)
る。証券会社に協力を求め(大阪・文化担当

2003.06.05

『演劇の都 投資で築け』朝日新聞/2003年6月5日

ないが、日本ではまだ
京都の小劇場と証券会社が手を組み、舞台公演の資金集めに投資のシス
テムを導入することになった。 秋のでまず1千万円を募り、興行収
入で投資者に利益をする
対象にするのは米国では珍しく
関係者は、ミュージカルの本場、米・ブロー
につくることも夢見ている。
配当を出したい
劇場の持ち出しや一部の
企業の協賛だけで、安く
質を落とすとい
ドウェーのような演劇の街
悪を打破したい」
と話す 瀬戸公
介・常勤監査役も「京都
京都の小劇場、証券会社と「共演」の創造性を発信できるチ
全額返金できた。
投資システムを計画し
ているのは、京都市中京
区三条通御幸町小劇場
「ブロードウェーのよう
街を目指すためには、
もっと幅広いがい
る」と感じ、小劇場公演
システムづくりに
踏み切った。
小原さんは「1%でもだ。
ャンス」と前向き。
関西経済連合会も小原
公演
さんの活動に注目。
企画を持つプロデューサ
らに参加を呼びかけ、
個人投資家に舞台作品の
一部を見てもらうオーデ
ィションの実施を検討中
演劇の都投資で築け
「アートコンプレックス
1928」 と、ベンチャ
企業への出資などを
がけるエンゼル証券 (本
社・大阪市)。同劇場で
10月25日~11月13日にあ
パフォーマンス集団
「キュピキュピ」のロン
グラン公演を最初の対象
にする。
同劇場プロデューサー
小原さん)が登
集めのための会社を設
立し、7月下旬からイン
ターネットで個人設
1口2万円の予
定で、集めた資金は舞台
セットや広告、会場費な
エンゼル証券はノウハ
ウ提供とアドバイザー役
を担う。 成功すれば新し
ビジネスモデルにでき
るメリットがある。
小原さんは別の公演
で、試験的に呼びかけ、
1日1万円で約3人から
0万円ほどの出資を受け
公演は好評で、目標
今秋から導入
1千万円
目指せブロードウ
今年3月、アートコンプレックス1928
であったキュビキュビのショー。 今秋の公
演が投資対象となる京都市中京区で

2003.05.04

『投資でめざせロングラン』朝日新聞/2003年5月4日

「投資」でめざせ ロングラン
演劇公演の資金集めに、小口の個人投資家を募り、目標動員数に達すれ
ば全額返金するというシステムを、中京区の小劇場「アートコンプレック
ス1928」が試みている。 ミュージカルの本場、米・ブロードウェーな
どでは投資システムが一般的だが、日本ではあまり例がないという。
中京の小劇場 新システム試行
発案者は同劇場のプロデ
公演の成功を楽しんでもら
ューサー小原啓さん。
「いい作品も小劇場では
2、3日の公演がせいぜ
い。舞台鑑賞のすその広
作品自体の熟成にも
ングラン公演を実現させた
「い」との思いからだ。
今回対象となったのは、
4月18日から6日まで公演
中の京都の劇団「電視遊戲
科学館」による「牡丹燈
ふくしゅう
兄弟の過去にまつわ
復讐を軸にした悲劇
で、大がかりな舞台美術が
見どころだ。同劇団は80席
同劇場で昨年、別の作品
で3週間のロングランを
し、1650人を動員した
実績がある。
1口1万円で、昨年と同
じ動員を超えれば全額投資
家に返金する。 少なかった
場合は、100人単位で10
%ずつ返還金が減ってい
く。 1650人を超えるよ
う、投資家は公演を口コミ
で広げたり、チケットを売
ったりしながら支援する。
もうけはないが、応援した
1口1万円 動員の実績次第で返金
う狙いがある。
関西の舞台文化関係者や
経済人など約50人が手を挙
げた。出資金は舞台美術や
チラシの制作費などに充て
た。 公演終了時、スクリー
ンに50人の名前が映し出さ
れる。 出資者らは「自分の
1万円は、あの道具に使わ
れたのかなと思いながら見
るのが楽しい」と言う。
ブロードウェーなどでは
個人投資家は「エンゼル
「ズ」や「バッカーズ」と呼
ばれる。 投資対象は作品
で、ヒットしてロングラン
になれば、相応の利益が配
当される。 投資システムは
ロングランへの足がかりで
あり、公演が評判になれば
世界中から人が集まると
いう観光資源になってい
小原さんは「本格的なロ
ングラン公演の実現で
社仏閣だけでない若年層に
アピールできる新たな京都
の観光資源にしたい」と話
している。

2003.05.01

『小原啓渡インタビュー』leaf/2003年5月

アートコンプレックス 1928 プロデューサー
小原啓渡
京都で新鋭劇団のロングランを成功させた立役者
舞台芸術のさまざまな荒波を乗り越えて奔走する
Interview
三条御幸町のアートコンプレッ
クス1928は、アーチ型の可動
式ホール。 今や世界で認められる
[コンドルズ]の関西初公演を成功
させるなど、文化の発信基地とし
熱い注目を浴びている。
プロデューサーである小原啓
さんは劇場主催公演の仕掛け人で
あり、舞台芸術を興行的にも成功
させようと毎日奔走している。 最
近では、出演者が格安で滞在でき
る施設「アーティスト・イン・レジ
デンス」も京都に確保した。
「舞台芸術はアングラっぽいイメ
ージがありますが、人々の生活と
密着すれば経済と結びつくと思っ
ています。 実際海外ではそれが成
立っていて、ブロードウェイで
は投資家がミュージカルに投資を
し、ヒットすればリターンがある
エンジェルシステムなどを導入し
ています。日本でもそれを試みた
ことがありましたが、規模が大き
すぎてうまくいかなかった。 逆に、
小さな劇場で導入していけばうま
くいくのではと、少しずつ実現さ
せようと動いています。」
そのためにも大切なのが舞台の
クオリティー。 小原さんは完成度
の高いものを見せるためにも、口
ングラン公演が必要だと言う。 そ
して今、昨年に引き続き新鋭劇
[電視遊戲科学館] の3週間口
ングラン公演を敢行する。
「公演期間の長さはもちろん、仕込
みと稽古期間を充分とることが重
要。昨年も10日間仕込みを行い、
最終的に公演3週目には入場でき
ないお客さんが出るほどでした。
劇団員たちは9日間ほとんど
夜で作業を行ったんです。 そのこ
だわりはすごい。 これからも可能
性を秘めている劇団なので、今回
もロングランに挑みます。京都は
付加価値の高い世界的にもポテン
シャルな土地。 ミュージカルを観
るためにNYへ行くように、いず
れアートコンプレックスの舞台を
観るために京都へ来る人が増えれ
ば。そんな魅力あるノンジャンル
アートを発信し た
い
です。」
DATA
4月18日(金)~5月6日(火)
2300円
科学館 「牡丹灯」
●アートコンプレックス1928
#075-254-6520
美しいと男性の切
ないと描い
た古典の名作を基に、
人間ドラマを描く。 古
い人形がひしめく洋
迫り来る無数
などの仕掛けやセット
を駆使した一大エンタ
ーテインメント。
Keito Kohara
PROFILE
こはら けいと
1960年 兵庫県宍都生まれ。同志社大学を中退後、フリーで大阪中座や京都南座
などで舞台照明として活躍。'97年にコンテンポラリー・ダンサー、スーザン・バージー
の舞台でテクニカル・コーディネートを担当し、パリ市立劇場 「テアトル・ド・ビュ
-」での公演を成功に導く。 友人の建築家・若林広幸氏から声がかかり、アートコン
ブレックス1928の立ち上げに参加。 '99年の開場後、 プロデューサーとして演劇やダン
スなど様々な公演を手掛けている。 リッジクリエティブ株式会社代表取締役

2003.04.21

『演劇運営にキャピタルマーケット』週刊京都経済/2003年4月21日

小劇場ホールの運営を手がけるアートコンプレックス
1928 (京都市中京区三条御幸町) が、 小劇団の公演を支援
する投資マーケット作りに乗り出した。 ベンチャー企業へ
の直接金融と同じように、 公演資金を提供する “個人投資
家” を公募。 観客動員数に応じて利益を還元する形を想定
している。 もちろん、 赤字になれば投資家はそのリスクを
負う。 従来は、前売りチケットの収入や劇団の自己資金で、
チラシ作製や舞台の工費など公演前に必要となる経費を
まかなう “キャッシュフロー型による運営が主流。 初期
投資を得ることで、 この自己資金の負担を減らす狙いだ。
(3面に関連記事)
演劇運営に
キャピタルマーケット
この投資マーケット作りに向けた試
験的なプロジェクトの第一弾として、
京都を中心に活動する劇団 「電視遊戲
科学館」 国本浩康代表) の公演に援
助金を募った。 公演は、アートコンプ
レックス1928が主催する形式をと
り、プロデューサーの小原啓渡氏が個
人的なつながりのある人に援助を要請
した。 これまでに大学教授やビジネス
マン、 企業経営者、 宮司などおよそ50
人が個人の資格で援助金を出えんした
という。
出えんされた資金は一口1万円。 劇
団員の報酬を除いた制作費のほとんど
をまかなえる金額になった。 すでにチ
ラシや舞台の制作に使われている。
今回の援助金は、 公演が成功したと
きには出えん者に返還される仕組み。
具体的には、 1650人の観客動員があ
った場合、出えん額の総額が返還され
る。 総観客数がこの数字に届かなかっ
たとき、100名マイナスになるごとに
出えん金の中から10%づつを出えん
者が負担する。 負担外となった金額に
ついては出えん者に返還される。
実際に投資を募り興行成績による
配当を実行するには、 法制上の制約
などもあることから、 今回は援助金
を私的に募る手法をとった。 そのた
め 「メセナ活動」 と位置付け、 出えん
者には返還されなかった分を寄付し
たものとして捉えてもらおうという
ものだ。
アートコンプレックス 1928 は昨年
2月、 「電視遊戲科学館」 と共同で長
期公演を行っていた。 この際は両者の
持ち出しにより自己資金で運営した
ところ、 小劇場としては多数となる
1650人の観客を動員できた。 この公
演で「自己資金だけでも運営可能なこ
とが分かった」 (小原氏) ことから、 公
演開始以前に必要となる経費部分を
十分にまかなう方法を模索。 1650人
の動員数を一つの実績として示すこ
とで、 小口でも多くの出えん金を得る
ことができると判断した。
アートコンプレックス 1928 では今
後、 この仕組みを発展させ本格的な投
資の枠組みを作る予定。 この場合、 投
資対象となる劇団の数を増やし、 基本
的にロングラン形式で公演する。 公演
が長くなれば長くなるほど投資家へ
の配当が大きくなる仕組みだ。 また、
専門家の協力を得ながら法制上の制
約条件を解決した上で、 劇団や公演計
画への投資を証券化することも視野
に入れている。20061223-shuukan-kyouto20030421_2.jpg

2003.04.20

『メセナも活用 小劇場で異例のロングラン公演』産経新聞/2003年4月20日

平成15年(2003) 日刊21716号
4|20 [日]
THE SANKEI SHIMBUN
発行所 産業経済新聞大阪本社 2003
|〒530-8277 大阪市北区梅田2-4-9
大阪 (06)6343-1221 (大代表)
臺經
新間
MediaNews
■メディア
|関西の小劇場では異例のロングラ
ニュース
同劇場の小原
メセナも活用。
ングラン公演を成立させたい」と意
プロデューサーは「いずれはア
メリカのプロードウエーのように、
(期間が限定されない) 本格的なロ
システムの導入を
/公演を、 京都市中京区の「アート 啓
コンプレックス1928」が昨年に引き
続いて今年も主催する。今回は新た
京都 「アートコンプレックス 1928」
メセナ”も活用
小劇場で異例の
ロングラン公演
録、新たな観客の獲得にび、「単なる資金援助で
つながった。
はなく、小さいリスクで
今回は新たに、一口一歩踏み込んだかかわり
万円で援助を募るメセナ方をしてほしい」と小
を導入。観客動員数が原。現在約五十人が趣旨
年の実績に達した時点でに賛同し、援助している
出資金を全額返却し、達という。将来的には、 プ
しなかった場合のみマイロードウェーで一般的な
ナス動員数の割合に応じ投資システムの導入を図
金額を援助してもらうり、本格的なロングラン
関西の小劇場演劇界の舘」が昨年に続き登場。 公演で千六百五十人を動という仕組みで、例えば公演に踏み出したい考え
悩みの一つは、表現者に新作「牡丹燈篭」 (作員。初日の観客はわずか 前年よりマイナス百人なだ。
とっても観客にとっても演出、 国本浩康)を、十十人ほどだったが、口コら10%の千円を、マイナ問い合わせは、 アート
公演期間が短いこと。週八日から五月六日まで計ミで評判が広がり、最終ス二百人なら20%の二千 コンプレックス 1928
末の三日間、四ステージ 二十六ステージ上演す週には大入り満員、入場 円を援助してもらい、残 (075-254-6
コというのが平均的で、一
520)
が伝わるころには公演 ●●劇団「電視遊戲科学館」が26公演 ●●
が終わってしまっている
ことが少なくない。演劇る。 仕込み、 リハーサル しきれない客も出るよう額を返却する。
ア 人口の拡大を阻む要因ににも十日以上かけておになった。「公演回数を基本的には自力興行を
もなっている。そんな現、完成度の高い作品づ重ねることで、役者は成 前提に、赤字になった場
状に風穴を開けようと、くりを、劇場側が全面的長し、作品も成熟しま合のみ援助してもらうこ
同劇場が昨年初めてロンにバックアップする。 す」と小原。それまでの とから、「セーフティー
グラン公演を企画した。 同劇団は昨年、二十六 劇団の動員実績の倍を記 ネットのメセナ」と呼
ダイナミックで作り込
まれた舞台美術に定評が
ある劇団「電視遊戲科学

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