小原啓渡執筆集「諸行無常日記」

2008.10.08

ロウソク

「ろ」、「ロウソク」で。

「ロウソク」と言えば、今ではインテリアや催事に使うものという印象が強いですが、僕が子供のころはクリスマスと誕生日は今と変わらないとしても、非常用というイメージの方が強かったように思います。

今は余程のことがない限り、停電というのはありませんが、昔はよくありました。
台風が近づいた時などは必ずと言っていいくらい何時間も停電したものです。
その時登場するのが「ロウソク」、懐中電灯さえ貴重だった時代です。
(なんだか爺さんみたいですね)

僕の家にも引き出しの中に「ろうそく入れ」とマジックで書かれた箱があって、何本かちびたロウソクが入っていました。
赤くねじれたどう見てもクリスマス用のロウソクでした。
(クリスマスにそのロウソクを見た記憶はありませんが・・・)

強風があばら家を吹きつける不気味な音、誰も話さない家族のぼんやりと浮かび上がる顔、そんな闇の中で、全く不似合いな赤いローソクが、すきま風に揺れながら燃えているのを、不安に眺めている幼少の自分をなぜか今でもはっきりと憶えています。

小原啓渡

PAGE TOP