小原啓渡執筆集「諸行無常日記」
2008.05.29
木
「き」、「木」で。
生物の中で、「木」より長生きをする生き物ってあるのでしょうか?
樹齢世界一はカリフォルニアにある、4730年余の「木」らしく、日本国内にも樹齢1000年を超える木はかなりの数が残っているようです。
(山梨県には樹齢2000年の桜があるそうです)
人間がどんなに長生きしてもせいぜい120年くらいと考えると、単純にすごいなと思ってしまいます。
僕が通っていた小学校のグランドにも樹齢150年は下らないだろう、巨大なイチョウの木がありました。
グランドのほぼど真ん中にあって、木造2階建て校舎のどの教室からも、そのイチョウの木が見えました。
イチョウの木は、春に新芽を出し、夏に緑の葉を広げ、秋に黄色く染まり、冬に落葉する、まさに、日本の四季を視覚を通して知らしめてくれる素晴らしい「木」です。
その木が、僕の在学中に切り倒されてしまいました。
おそらく、グランドの中央にあって邪魔だとか、子供が木から落ちて危ないだとか、落ち葉の清掃が大変だとか、そんな理由からだったと思うのですが、子供ながらに随分ショックだったことを憶えています。
小学校の記憶で残っているイメージには、どれもこのイチョウの木が入っていることを考えると、よほど強いインパクトがあったのだと思います。
そんな素晴らしく貴重な「木」を切った当時の関係者を、本当に情けなく、残念に思うだけでなく、怒りさえ感じます。
そして、今この瞬間も世界各国で多くの木々が伐採され続けている事実にも、やり場のない悲しみを覚えます。
たとえ、生活に不自由しても、
「木を守るために、みなさん我慢して下さい」と言われれば、多くの人が納得するのではないかと思うのですが、どうでしょうか?
少なくとも僕は、実際に不自由をしても「木を切らないで欲しい」と心から思っています。
小原啓渡