小原啓渡執筆集「諸行無常日記」

2008.12.28

ヒーロー

「ひ」、「ヒーロー」で。

僕にとって子供の頃の「ヒーロー」と言えば、劇画を原作にTVドラマになった「柔道一直線」の主人公「一条直也」でしょう。

高校まで柔道をやっていたことをみても、子供の頃、と限定できないほど影響を受けていたのかも知れません。

ただ、僕の見た「一条直也」は漫画でもなく、仮面ライダーのような超人的なキャラクターでもない、桜木健一さんという俳優が演じておられた生の人間でした。

僕が京都の南座で揚幕の仕事をしていた時に、あるお芝居の役者さんとして出演され、実際に毎日(1か月ほど)お会いすることになりました。

初めてお会いするリハーサルの日は、さすがに緊張したというか、非常に複雑な気持ちでした。

もう子供ではないですから、すべて現実として捉える事ができても、テレビの中の「ヒーロー」が目の前に現れて、話もするわけですから複雑です。

実際にお会いした桜木健一さんは、小さくて気さくなおじさんでした。

そういえば、「柔道一直線」に出られていたヒロイン吉沢京子さんともその後お会いしましたし、近藤正臣さんとも数年前、あるシンポジウムでご一緒させていただきました。

「小原君っておもしろいね」と言っていただき、普通に近藤さんと話している時間が、現実ではないような錯覚にも陥りました。

ただ、桜木さんにも、近藤さんにも、「柔道一直線」の話だけはしませんでした。

なぜか、その部分にだけは触れたくなかったのです。

小原啓渡

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