小原啓渡執筆集「諸行無常日記」

2008.12.03

山椒魚

「さ」、「山椒魚」で。

「山椒魚」は井伏鱒二の処女作ですが、僕は中学の国語の教科書の中で読みました。

多くの文学少年が一度は洗礼を受けるという「太宰治」が師事した作家として僕も井伏鱒二を認識していて、太宰からの流れで興味を持ちました。

「黒い雨」は映画化もされ有名ですが、やはり隠喩に満ちた「山椒魚」は色々な解釈ができるという意味でも面白く、山椒魚や蛙を擬人化することでより人間の弱さや哀しさを表現することに成功していると思います。

非常に有名かつ短く単純なストーリーなのであらすじは置いておいて、頭の部分を少しだけ。

山椒魚は悲しんだ。
まる二年の発育のために、棲家である岩屋から出ようとすると、頭がつかえるのである。
 「何たる失策であることか!」
 岩屋の中は、体を前後左右に動かすことができるだけで、泳ぎまわれるほど広くはなかった。山椒魚は深い嘆息を漏らして呟いた。
 「いよいよ出られないというならば、俺にも相当な考えがあるんだ」
 しかし、うまい考えなど一つもなかった。

小原啓渡

PAGE TOP