小原啓渡執筆集「諸行無常日記」
2008.10.06
るつぼ
「る」、「るつぼ」で。
ニューヨークなどに代表される多種多様な民族が混在して生活をしている都市を称して「人種のるつぼ」と言いますが、最近では混在していても決して溶け合うことがないという意味で「サラダボール」という表現が使われるようになってきています。
確かに、僕もニューヨークを歩いている時に何度か道を聞かれたことがあり、まさか日本で外国人に道を尋ねる人がまずいないことを考えると、アメリカが多民族国家であることに納得がいきます。
こと先進国において日本ほど単一の民族で占められている国も少ないのではないでしょうか。
こうした国の在り方が良いか悪いかは賛否両論ですが、少子高齢化が進む日本において、いつまで外国人の受け入れを厳しく制限し続けることができるのかは疑問です。
昨日、芸術創造館で今回2回目となる「ダンスコンプレックス」という自主企画があり、ダンス(身体表現)という大きなくくりの中で、様々なダンスのチーム20組のパフォーマンスを見ることができました。
ヒップホップ、クラッシック、モダン、コンテンポラリー、ベリーダンス、パントマイムなど、極めつけはバトントワリングの世界チャンピオン(3連覇)の方まで参加されて、本当に見ていて楽しく、控室の雰囲気も和気あいあいとして気持ちのいい企画でした。
「違いを大切なものと考え、違いを認め、尊重し、違いから刺激を受けて、学ぶ姿勢」の素晴らしさを実感することができました。
現実的な話をすれば、政治や経済などにおける利権や宗教などが絡んでくると、多民族社会における問題はさらに複雑化していきます。
しかし、アートにはそうした軋轢はありません。
だからこそ、アートは決して溶け合うことのない「サラダボール」から、もう一度都市や国家を健全なる「るつぼ」に変える可能性を秘めているのだと思います。
小原啓渡