小原啓渡執筆集「諸行無常日記」

2008.08.08

約束

「や」、「約束」で。

子供のころ、僕の田舎に映画館が一つありました。
なぜ、兵庫のど田舎に映画館があったのかは今でも疑問ですが、確か中学に入る頃にはもう取り壊されていたように思います。

僕が初めて映画館で見た映画が「約束」、萩原健一と岸恵子が主演、僕が小学高学年の頃ですから、1970年代初めの作品だと思います。

子供向けの映画ではないのに、なぜ映画初体験がこの映画だったのかは、これまた疑問ですが、強烈な印象が残っています。

まだ白黒テレビが主流の頃、田舎の小学生が大画面でカラー映像を見ること自体、今から考えてもインパクトがあっただろうと思いますが、よりによってこの映画、母親の墓参りのために仮出所した女(岸恵子)と逃走中の強盗犯(ショーケン)の哀しくも切ない大人のラブストリーで、もう35年以上経ちますが、いくつかのシーンを鮮明に思い出せるほど僕の脳裏にこびりついています。

是非いつか、もう一度見てみたい映画です。

そして、男と女の間で交わされる「約束」に、今でも言いようのない「哀しさ」と「切なさ」を感じ取ってしまうのは、おそらくこの映画の影響なのだと思います。

小原啓渡

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