小原啓渡執筆集「諸行無常日記」
2006.12.12
金沢蓄音器館
先日、創造都市会議の一環で行われている「金沢学会」のシンポジウムに呼んで頂き、金沢に行ってきました。
たまたま僕がお会いする方々だけなのかもしれないけれど、金沢には文化人のみならず経済界にも、とても生き生きとして素敵な人たちが多い。
2日間の学会が終わった後、「金沢蓄音器館」を案内して下さった八日市屋さん(当館の館長でもある)もそんな素敵な方でした。
彼のお父さんが生前にコレクションされた国内外の蓄音器540台、SPレコード2万枚を基に金沢市が元銀行だったビルをリノベーションして造りあげたのがこの「蓄音器館」。当時、家2軒が買えたほど高価だったものから、携帯用のものまで、様々な蓄音器がどれも完璧に整備されて、音の出る状態で展示され、聞き比べてみることも出来る。
僕はナット・キング・コールの「枯葉」をリクエストして、八日市屋さんお勧めの蓄音器で聞かせて頂いたが、何とも言えない豊かさを含んだ音の深みと、実体験としては知るはずもない古き時代への郷愁で、心底感動しました。
八日市屋さんは、自ら現代の音を蓄音器に取り込んで再生するインターフェースを開発され、特許も取られて、製品化されたらしいが、既に完売。ただ、ボディーに傷があり1台だけ残っているというので、無理を言って譲ってもらうことにしました。
その1台が今日金沢から芸術創造館に届きました。(写真)
早速ホワイエの受け付けに設置し、お気に入りのオーティス・レディングをかけました。デジタル化された音に慣れた耳には、蓄音器で聞くレコード音は逆に新鮮です。
ライブではないけれど、デジタルよりずっとライブ感があるっていうのも素敵です。
小原啓渡