小原啓渡 執筆集「諸行無常日記」

2008.01.10

ネットワーク

新年から10日続いてますね。
少し続けてみて思うのは、やはり、あまり内容にこだわっていては難しいってこと。

暇な日もあるけれど、忙しい日もある。
忙しい日は、当然時間も気持ちの余裕もない。
内容を精査していては書き続けれない部分は確かにありそうです。

どちらをとるかですが、今年は続けることを第一義としたいと思います。
つまり、つまらない(詰まっていない)内容の日もあるってことですね。
あしからず。

今日は、つまらない日、「ね」
ネットワークに関してほんの少し。

いろんなネットワークがあると思いますが、基本的に人的ネットワークに関しては、「ネットワークをつくる」というより、「ネットワークができる、あるいは、できた」っていう方が好きです。

あまりに打算的に、表層的に人とのつながりをつくっても、僕の経験上、ろくなことがない。

基本的には、あくまで自然に、ビジネス的というよりは人間的なコミュニケーションを大切にしたい気持ちは大きいですね。

もちろん仕事上、そんなことばかり言っていられない場合はありますが、できる限り本質的な付き合いの中で、仕事も進めて行きたいですね。

小原啓渡

2008.01.09

ヌーボー・シルク

今、大好きな歌舞伎(初春大歌舞伎・松竹座)を見てきたので、今回見た演目に関して書きたいところですが、今日は「ぬ」、せめて歌舞伎から連想できる(僕だけかもしれませんが・・)「ヌーボー・シルク」(新しいサーカス)に関して。

歌舞伎とヌーボー・シルク、一見何の関連もなさそうですが、僕の中では大きな共通点があるんです。
キーワードは「コンプレックス」つまり「複合」です。

歌舞伎は、ご存じのように芝居、舞踊、浄瑠璃や常磐津などの唄、「けれん」と言われる宙乗りなどのアクロバティックなものまで取り込んだ複合的な演出で知られていますが、ヌーボーシルクも、伝統的なサーカスをベースに、ダンスや演劇、現代美術、最近ではスポーツなどの要素まで取り込んだコンプレックスアートです。

日本でヌーボーシルクといえば、カナダを本拠地とする世界最大の「シルク・ド・ソレイユ」は有名ですが、発祥の地といわれるフランスだけでなく、現在では世界各国で、芸術的な演出を特徴とするものから、エンターテイメント性に特化したものまで、様々なタイプのカンパニーが活動をしています。

私が初めてヌーボーシルクに出会ったのは、1996年コペンハーゲンでのこと。
今や伝説的な存在となっている「ク・シルク」という3人がパフォーマンスを行う、芸術性を追求するタイプのカンパニーでした。
その斬新な表現と、深い哲学を感じさせる彼らの濃厚な世界観から受けた衝撃は今でも忘れることが出来ません。
以来、機会のあるごとに、世界各国でヌーボーシルクを見てきました。
そんな中で、3年前、ラスベガスで見たシルクドソレイユの「KA」は、エンターテイメント性に特化したタイプとしては、極致と思わせる作品でした。

実は最近、この両極に位置する2つの作品を超えるものに中々出会えない状態が続いており、ヌーボーシルク自体に対する興味が少し薄れています。(一昨年モントリオールでみた「セブンフィンガーズ」の新作はよかったですが・・)

究極と思えるものに出会うことは、幸せでもあり、ある意味で、不幸なことなのかもしれませんね・・・・

小原啓渡

※今までに見た作品に関して(一部ですが)書いた文章がありますので、ヌーボーシルクに興味のある方は是非以下のURL覗いてみてください。
https://www.artcomplex.net/text_archives/n/

2008.01.08

任務

最近では少し勢いが衰えてきたようですが、スタッフ内で「腹ペコ隊」なるグループ(彼らは秘密結社と呼んでいるらしいが・・・)が存在するらしい。

隊長はスタッフの中でもメタボ症候群が危惧されるN君とのことですが、彼らがどういう活動をしているのかと、おそらく、隊には入っていないだろうと思われる細身のM君に探りをいれてみたところ、仕事がら頂く機会が多い「差し入れ」の処理が主な「任務」とのことだ。

腹ペコ隊員は、差し入れのお菓子などを食べた後だけでなく、食事の後も
「ごちそうさま」ではなく、

「任務完了!」と言うらしい。

小原啓渡

2008.01.07

ナント市

今回は「な」、昨年視察に行ったフランス西部、ロワール川河畔に位置する「ナント市」に関して。

「文化による都市再生」の成功例として知られているナント市は、市長の強力なリーダーシップのもと、長年「創造都市戦略」を推し進め、現在ではフランスで最も住みやすい街に選出されるまでになった。

その象徴的な事例として注目されているのが、旧ビスケット工場を現代アートセンターにリノベートした
「ル・リュー・ユニック」
ここを視察するのがナント市訪問の主な目的でした。

2004年から大阪の木津川河畔の旧造船所跡地をアートスペース(クリエイティブセンター大阪)として再生する活動を続けている私にとって、「リュー・ユニック」は世界の先行事例として、非常に魅力的でした。

事業規模に関しては「リュー・ユニック」が地方自治体と国から年間6億円ほどの補助金をもらっているのに対し、C.C.O(クリエイティブセンター大阪)は残念ながら公的な補助金はゼロですから、全く比較になりませんが、「廃虚化した近代産業遺産を文化芸術という切り口で再生し、都市の活性化に生かしていく」という活動のコンセプトは同じです。

「リュー・ユニック」には、劇場やギャラリーはもちろん、レストランや書店も入っており、複合的な文化施設として市民に開放されています。

先日行ったシンガポールの「セントジェームス・パワーステーション」(旧発電所をライブハウスやクラブ、レストランにリノベートした複合施設)がかなり商業化していたのに対し、さすがフランスと言うべきか、「リュー・ユニック」にはアート感覚が随所に香りたっていて、歴史の堆積を感じさせる重厚感がありました。

一方C.C.Oも造船所当時の雰囲気を残すかたちでの改装を重ねており、まだ立ち上がって3年程度ですが、昨年末にはライブハウスとレジデンスもオープンし、何とか「リュー・ユニック」に追いつけ追い越せと頑張っています。
http://www.namura.cc/

みなさん、応援してくださいね!

小原啓渡

2008.01.06

トルコ 黒海

新年に入ってから、なぜかこのブログ続いていますね。
さて、いつまで続くことやら・・・。

今回は「と」、トルコでの思い出を少し。

10年ほど前、コンテンポラリーダンスのフランスツアーの合い間に、1週間ほどトルコで休暇をとったことがあります。パリからイスタンブールに入り、当初はカッパドキアに行くつもりが、「黒海を見てみたい」と気が変わって急遽黒海沿岸の小さな村へ向かうバスに乗り込みました。

「黒海って、ほんとに黒いのかなぁ?」っていう単純な理由でした。

目的の村に到着したのは夜、海の見える宿がいいと思って、海岸へ。

「黒い!」

夜の闇より深い漆黒の海が目の前に広がっていました。

砂浜に座り込んで、しばらく呆然としていました。
「夜だから?いや、ほんとに黒い!」

美しい弓なりの砂浜の端にかすかな明かりが見えて、そこからフォークな音楽がかすかに流れて来ました。

その音に引き付けられるように砂浜を1キロばかり歩きました。

海にせり出した、木造りのパブがあって、ミュージシャンがアコースティックにトルコ民謡を演奏していました。

毎日、夜になるとそこに通って、漆黒の海を見続けました。

小原啓渡

(黒海が黒いわけ:表層水と深層水の循環が少ないため、深層水では酸素が欠乏し嫌気性バクテリアによって硫化水素が発生する。その硫化水素が海水中の鉄イオンと結合し黒色の硫化鉄となるため海水の色が外洋と比較して黒味を帯びている。)

2008.01.05

天才

天才

「て」です。
「手」でいこうかとも思いましたが、大学の講義などで「天才」ってどんな人ですかと聞かれることが何度かあったのでこれでいきましょう。

「天才」という文字を分解すると、「天」はすなわち「神」、ただこの神は宗教的な神というより、創造主(英語ではThe creation)と考えるほうがベターかと思います。
「才」は才能でしょうか。
となると、「神(創造主)の才能を持った人」ということになりますね。

ある一部の感覚が標準的なレベルをはるかに超えた状態で生まれついた、あるいは発達した人というのはいると思いますが、人が万能の神であるはずはないので、あくまで部分的能力を取り上げて天才と呼ぶのが一般的なのかもしれません。

ただ僕が天才と感じる人は、そうした部分的に高い感覚をもった人というより、エジソンが「天才とは、99%の努力と1%のインスピレーション」と言ったように、決してあきらめることなく継続できる力を持った人ですね。

「100里の道も99里をもって半ばとせよ」

「人事を尽くして天命を待つ」

こうした格言も同じ概念だと思っています。

小原啓渡

2008.01.04

ツン

「つ」ですね。
「罪」とか書きたい気もしますが、このところ真面目な題目が続いているので、今回はちょっとはずして「ツン」とかどうでしょう。

舞台用語で「ツン」ってあるんですが、何だか分かりますか?
「舞踏」などで使われる、ひもパンツのことなんです。

「舞踏とは命がけで突っ立つ死体」
創始者といわれる土方巽の言葉は有名ですが、舞踏は日本で生まれ、世界に多大な影響を与えた舞台芸術の1ジャンルです。
(舞踏に関して詳しく知りたい方は、以下のwikipediaをお読みください)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9A%97%E9%BB%92%E8%88%9E%E8%B8%8F

実は僕が舞台業界に入ったきっかけも、大学1年の冬、京都で見た舞踏集団「大駱駝艦」の屋外公演なのですが、これに関しては、「ふ」の時に「舞踏」というテーマで詳しく書きたいと思います。
今回は「ツン」。

京都に由良部正美さんという舞踏家がおられて、彼のノルウェー公演に照明プランナーとして同行した折(この公演は、白夜の中、歴史的バイキングの遺跡で行われました)、初めて舞踏家が全身に白塗りをする一部始終を見せて頂きました。

頭髪もそり落とした全身に白いドーランが塗り込まれていく様と、鍛えられたしなやかな肉体に僕は見とれていました。
この時に由良部さんが「ツン」のことを教えてくれました。

白夜に浮かび上がる、舟形に配置された古代石の群、深い森に囲まれたバイキングの遺跡の記憶に、由良部さんの白い肉体と、局部を隠す白い「ツン」の映像が奇妙に連なっています。

ただ、なぜ「ツン」と呼ぶのか、僕にも不明です。
知っている方、教えてください。

小原啓渡

2008.01.03

知性

「ち」ですね。
「血」とか「痴」とかも面白そうですが、昨日ヘッセの「知と愛」に関して触れたので、「知性」でいきましょう。

「知性」って、よく「知性的な人が好き」なんて感じでよく使いますが、実際のところ何なんでしょうね?

学校の勉強ができるからって訳でもないだろうし、物知りだからっていう単純なものでもないですよね。
それじゃ、僕が人を見て知的かどうかの判断をする場合の基準を考えてみると、やはり、「目」です。
「愚かさのない、澄んで、力のある目」かな。

もう少し哲学的に考えると、「無知の知」っていう言葉が浮かんできます。
「知らないということを知っている」というインテリジェンス。

人類が知っていることなんて、宇宙も含めたこの世界のほんの一部ですよね。
ましてや、個人が持っている知識や情報量なんてたかがしれてる。
知らないことばかりです。

かろうじて価値が高そうなのが「智恵」
智恵っていうのは、経験に基づいているという意味で、貴重な気がします。
ただ、智恵が豊富だから知的っていうのも何となく納得できない感じです。

僕が知性を感じる人は、自分が知らないということをちゃんと認識した上で、あらゆるものをありのままに見る無垢な目をしているような気がします。
結局のところ、今どれだけの知恵や知識を持っているかというようなことではなく、好奇心や探究心をもって物事を深く捉え、学ぶということを大切に考え、楽しんでいる人かもしれません。

「愚かさを微塵も感じさせない目」を持った、そんな知的な大人になりたいですね。

小原啓渡

2008.01.02

「た」ですね。
「魂の変遷」に関して。

先日、クリスマスプレゼントに、ヘルマン・ヘッセの「シッダールタ」という本をもらいました。
送ってくれた友人は、れっきとした大学教授なのですが、僕のことを何の臆面もなく、どこでも誰の前でも「お兄ちゃん!」と呼ぶ、かなりユニークな女性です。(あまりに、自然に妹が兄を呼ぶような感じなので、説明しなければみんな本当の兄妹と思うらしい・・,そう言えば、この前は、髪の毛1本を送ると健康状態がすべてわかるという変な研究所の資料を送ってくれました!?)

余談はさておき、この本、クリスマスから読み始めて、大晦日に読み終えましたが、とても感慨深い内容でした。

シッダールタとは、出家をする前のブッダの実名ですが、この物語の主人公はヘッセが捉えたブッダであって、史実に基づいたブッダの話ではありません。
それでも、歴史の中で学ぶ超人的なブッダより、ずっと人間臭く、リアリティーがあり、読み進むうちにすっかり物語に引き込まれていきました。

主人公が、出家して苦行僧となるも、その後、世俗にまみれ、もう一度悟りへと帰依してく「魂の変遷」には、ヘッセの深い考察を感じさせる説得力がありました。

ヘッセの著書は、中高時代に「車輪の下」と「知と愛」を読んでますが、もう一度読み返してみたいと思いました。

クリスマスにブッダに関する本を読んだからという訳ではありませんが、基本的に宗教が示そうとするのは、言葉の使い方は違っていても、本質的な精神性である「魂」における「愛」の意味なのかもしれません。

小原啓渡

2008.01.01

想像と創造

新年明けましておめでとうございます!

昨年末は過密スケジュールで、海外出張(シンガポール)や自主事業(1928では9度目のコンドルズなど)、C.C.O(名村造船所跡地)では大晦日のオールナイトイベントもあり、怒涛の師走となりました。

とにかく無事に新年を迎えることができ、ホッとしています。

本年もよろしくお願いいたします。

さて、今年の最初は、「そ」ですね。
自分にとって、とても重要なテーマ「創造と想像」
ダブルでスタートしたいと思います。

いい意味でも、悪い意味でも
「想像より高く飛ぶ鳥はいない」っていう言葉が好きです。

想像はどこまでも広がります。
想像力はたくましい方が楽しいですよね。
もちろん、ネガティブな想像もありますから、痛し痒いしの部分はありますが・・・・。

想像力の強い人は、概して創造する力もありますね。
逆に言うと、リアルに想像できない人は、リアルな創造もできないと思います。

10年以上前から「創造とは何か」というひとつのテーマで、2ヶ月に一度、クリエーターの方々にインタビューを続けてきた原稿が本になっていますので、是非読んでみてください。

「クリエーター50人が語る創造の原点」(論創社)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4846005534/qid%3D1112148497/249-9473768-3588361

各界で興味深い活動をされているクリエーターの方々の、創作の秘密が、会話形式でコンパクトにまとまっています。
自分で言うのもなんですが、実にいい内容で、きっと、何かのヒントになると思います。

今年が皆さんにとって、素晴らしい年になりますように心から祈っています!

小原啓渡

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