小原啓渡執筆集「諸行無常日記」
2008.10.14
オペラ
「お」、「オペラ」で。
舞台業界に属していながら、日本で「オペラ」を観たのはほんの数回です。
理由はほぼ金額、やはり高いですね。
フルオーケストラをはじめ、舞台美術や衣装の運搬など海外からの公演となると莫大な経費がかかるのは理解できますが、やはりきついです。
その反動もあって比較的安く観られ、歴史的な劇場の雰囲気が数段上の海外では事前にネットでチケットを入手するか、現地ホテルのコンシェルジェに相談するなどして何とか確保するようにしています。
ユーロに統一される前のイタリア、オペラの殿堂ミラノ・スカラ座の天井桟敷で観た「トリスタンとイゾルデ」は、その内容も雰囲気もすべて含めて、僕にとって最高のオペラ体験でした。
どうしてもミラノ・スカラ座でオペラを観ようと思った理由の一つに、映画「カストラート」の影響がありました。
(「カストラート」とは、7歳?11歳くらいの男子を去勢することで変声期をなくし、ボーイソプラノ時の声質や音域をできうる限り持続させようとした歌手のことで、現在では人道的見地から禁止されていますが、そのピークには、毎年4,000人以上にも及ぶ男子が去勢されたとの記録が残っています)
最も有名なカストラートは、ナポリに生まれたカルロ・ブロスキ、通称ファリネッリと呼ばれ、映画「カストラート」は彼をモデルにしています。(ちなみにその音域は3オクターブ半あったといわれています)
ファリネッリの生涯をつづった内容も素晴らしかったですが、この映画のサウンドトラックは、高音域を女声のソプラノ歌手、低音域を男声のカウンターテナーが録音し、その後カストラートの声質に近づけるべく合成したというもので、これも感動モノです。(CDも出ています)
映画「カストラート」、敢えて天井桟敷でみるミラノ・スカラ座の「オペラ」、どちらも僕の一押しです!
小原啓渡