小原啓渡執筆集「諸行無常日記」

2008.07.31

フリーター

「ふ」、「フリーター」で。

大学を中退し、インドで放浪生活を送った後、帰国して、昼は瓦屋さん、夜はジャズ喫茶でアルバイトをしていました。
まさに「フリーター」ですね。(当時は、この言葉さえなかったですが・・・)

今では、「フリーター」が一般的に認知され、何となく市民権を得ている感がありますが、当時はかなり世間的に肩身の狭い存在でした。

だからというわけでもありませんが、その後、舞台照明の会社に入り、技術を身につけて「フリーランス」になり、最終的には自分の会社を立ち上げました。

「フリーター」「正社員」「フリーランス」「経営者」と一応一通り経験してきて良かったと思うのは、それぞれの立場の人の気持ちや、考え方が何となくわかるということです。

「子供を持ってみなければ、親の気持ちがわからない」と言われるように、やはり実際その立場になってみなければ、実感として分からないことは確かにあると思います。

また、今ではどんな業界でも「契約社員」というのがありますが、当時(約30年前)、この言葉もなかったですね。

実は、僕が3年ほど正社員をやっていた会社を辞めた理由が、この「契約社員」に関連しています。

ある日、会社に「15日契約の労働形態に変えて欲しい」と要望を出しました。

当時は、一般的に正社員かアルバイト(もしくはフリー)という二つの雇用形態しかなかったので、会社側は「そんな中途半端なことはできない、実際そんな形でやっている会社があれば例を示せ」と言われて、探しましたが実際見つかりませんでした。

「他でやっていなくても、検討してください、認めてもらえなければ辞めます」と食い下がって、役員会で話し合ってもらいましたが、結局、前例がないということを理由に断られ、言葉通り辞職しました。

その後、自分の会社を始めた時、まっ先にやったのが「契約社員制」の導入でした。
その人に応じて、正社員の他に10日契約、15日契約、20日契約など、どんな形でも応じる労働形態を作りました。(今では全く普通ですが・・・)

正社員になってしまうと、自分のやりたいことが時間的にやりにくくなる、とは言うものの、最低限の収入は確保したい、こういった人たち(例えば役者やダンサーなど)にとっては、有用だったと思います。
(実際、当社のスタッフの多くが、劇団などの出身です)

つまり、「フリーター」であれ、「契約社員」であれ、「正社員」であれ、人それぞれが自分の働き方を選択した結果のものであるならば、それがその人の生き方でもあり、他人がとやかく言う必要はないし、もちろん上下関係などない、というのが僕の長年変わらない見解なのです。

小原啓渡

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