小原啓渡執筆集「諸行無常日記」

2008.05.18

臨界

「り」、「臨界」で。

「りんかい」というと「臨海」を思い浮かべる人がほとんどだと思いますが、
今回はあまり一般的に使われることのない言葉,、「臨界」。

簡単にいうと、液体を沸騰させた場合、徐々に温度が上がり、気体になる瞬間、その境目等を「臨界点」というのですが、哲学的に解釈するなら、
ある現象がエネルギーを徐々に蓄積していき、その限界点で別の性質をもった現象に変化するその境目とでも言えばよいでしょうか。
一種の爆発的変化を来たすその境界だと言えるかもしれません。

例えば「流行」という社会現象を見た場合、初期には緩やかな増加しか見せなかったものが、ある時点でそのカーブが急激に上昇して、爆発的に普及するということがよくありますよね。

何が言いたいのかというと、現象(特に意識に関わる社会現象)というのは、現状になるのに10年かかったから、現状の2倍になるのにあと10年かかる、といった正比例の変化ではなく、一挙に、爆発的に急激な変化を起こす「臨界点」を持ったものが多いということです。

C.C.O(名村造船所跡地)で最初に行ったイベント(ナムラ・アート・ミーティング)のタイトルは「臨界の芸術論」というものでした。

「アートが持つ力」は、現状まだ一般的に認識されていはいないと思いますが、いつか日本においても急激にその価値と理解が高まる時期(臨界点)がやってくるのではないか、そしてその臨界点は近いのではないか、というのが一つのテーマでした。

環境問題に対する意識などにおいても、一挙に全世界的な意識変革が起こる可能性もあるわけです。

もちろん、感染症の流行における「感染爆発」のように、この「臨界点」が負の現象として現れる場合もありますが、
「このままの率で推移すれば、あと何年で・・・」という話を耳にするにつけ、
私たちはこの「臨界点」の到来に、幽かな望みをつなぐしかないのかもしれません。

小原啓渡

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