小原啓渡執筆集「諸行無常日記」

2008.02.17

葬式

「そ」、死に関することが続きますが、今日は「葬式」で。

「その人の最も古い記憶が、人生に大きな影響を与える」
という話を聞いたことがあります。

子供時代の記憶として残っているのは、概ね3歳くらいからだと言われていますが、どの記憶が一番古いのかを確定することは意外に難しいようです。

ただ、僕の場合は簡単でした。
最も古い記憶(3歳前後)と次に古いだろうと思える記憶(5歳前後)の間が空いていて、最初の記憶もかなりハッキリと思い出すことができたからです。

もう40年以上も前の話です。

当時、実家がある田舎には火葬場がなく、概ね「土葬」でした。
棺桶も現代の箱型ではなく、人一人ひざを抱え、座った状態で収まる大きさの、まさに「桶」でした。

最後のお別れに、参列者が蓋の開いた棺桶を取り囲んでいます。

父はその人たちの後方から僕を持ち上げました。

ふわっとした感覚があって、覗き込む人たちの頭越しに、死装束を着て、折れ曲がるように座っているおばあさんが見えました。

頭に着けられた白い三角布や手に巻かれた数珠、新しい草鞋・・・

すべてがハッキリと目に焼きついているのに、記憶の中には音も、臭いも、私を持ち上げている父の手の感触さえありません。

ただ、僕だけが棺桶の上に浮いている・・

そんな記憶です。

「最も古い記憶が、人生に大きな影響を与える」

この言葉を当てはめるなら、

僕はまさに、死を経験し、蘇生し、「死」の対極ともいえる「生」を考え続ける人生を送っています。

皆さんもこの機会に一度、
「最も古い記憶」をたどってみてはいかがでしょうか?

小原啓渡

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