小原啓渡執筆集「諸行無常日記」
2008.02.08
キス
「き」、ちょっと照れますが「キス」で。
「キス」といっても、ヨーロッパなどで挨拶として頬などにする「キス」ではなく、いわゆる「接吻」に関してですが、僕なりの解釈?があるので、それを少し。
昔「間接キス」っていうのがありましたね。(今でもあるか?)
女子が飲んだコップなどを男子が使ったときに、
「わーぃ!間接キッスしよったぁ?!」ていう、あれです。
これって、要は「唾液」に関係しているんじゃないでしょうか。
例えば、同じお箸を使うとか、歯ブラシを使うとかと同じです。
唾液っていうのは「内」なるもので、握手などの時に接触する皮膚、つまり「外」(露出されているもの)との接触より意味が深くなります。
こう考えると「口(くち)」は、外と中の境界だと言えますよね。
これは、セックスも同じ考え方ができると思いますが、外から内、より親密な接触の意味を持ちます。
まあ、このあたりの話は、よくあると思うのですが、僕はもう一つ大きな意味があるのではないかと思っています。
「沈黙の共有」です。
くちは、内と外の境界であると同時に、言葉を発する器官です。
人はコミュニケーションのほとんどを言葉に依っていますが、もう一段親密なコミュニケーション手段として「身体」があります。(セックスも身体を介した一つのコミュニケーション手段ですよね)
接吻は、「くちを塞ぐ」行為、言い換えると「言葉のコミュニケーションを遮断する」行為だとも言えます。
つまり、「ことばによるコミュニケーション」から「身体によるコミュニケーション」への境界でもあるわけです。
そして、その境界線に「沈黙」がある。
「キスとは、沈黙の共有である」
なんて、ちょっとキザですが、素敵な感じがしませんか?
小原啓渡