小原啓渡執筆集「諸行無常日記」

2008.01.12

はったい粉

みなさん、「は」、はったい粉って知ってますか?
知ってる人は、農業関係者か植物系の学者でない限り、年寄り扱いされるので注意してください。

というのも、はったい粉は、オオムギを炒って挽いた粉なんですが、「はったい粉」の話をして、乗ってくるのは50代、せいぜい40代ですね。
あるいは、実家が田舎の農家で、残念ながらそれほど裕福でなかった30代かな。

僕のように、40代で兵庫のど田舎出身で、貧乏な農家のせがれは、ど真ん中、つまり「はったい粉世代?」なのです。

小学生くらいまで、よく「はったい粉」を水でといて、砂糖を入れて食べてました。
今のように、コンビニがあって、家にはいつも何かしらお菓子が常備されているような時代ではなかったんですね。
おやつと言えば、干し柿や季節によってはトウモロコシとかトマトとか、甘いものなんて、ほんとカリントウとか「はったい粉」くらいしか無かった時代でした。(うちが貧しかったというのもあるかと思いますが・・・)

いゃぁ、こんな話をすると、いきなりオジン臭くなってメゲますね。
でも、とても懐かしい。

あの何とも粉っぽくて、穀物臭くて、素朴な味。
暗い台所ではったい粉をといている自分や、混ざり切らずに固まった砂糖の甘さの記憶が、すべて白黒のイメージなのも、物悲しくて、それはそれで、いいんです。

ただ、僕の父親は、おそらく戦後のもっと貧しい幼少時代に毎日食べさされたイモを、今は絶対に食べません。
芋を毎日食べなくていい生活に幸せを実感するのだそうです。

そんな父親に比べて、僕がはったい粉を懐かしく思うのは、本当の貧しさを知らないからかもしれませんね。

小原啓渡

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